世界三大瀑布の一つでありながら、ナイアガラの滝は世界遺産ではありません。なぜナイアガラの滝は世界自然遺産にならないのでしょうか。
ナイアガラの滝は、その景観を保つため人工的に水量や水流の調整を行なっているからです。
ナイアガラ川の水の流れを調整している理由
アメリカ滝とカナダ滝を比べると、カナダ滝の方が落差が低くなっています。自然の状態だとナイアガラ川の水は低い方へ低い方へと流れカナダ滝とアメリカ滝の落差はさらに広がり、いずれアメリカ滝は枯れてしまうと言われるほどです。
そのためカナダ滝の上流には水門が設けられ、水流が調整されています。通常アメリカ滝へ1割、カナダ滝へ9割の水が流れ落ちるよう調整しているとのことです。
水量も調整されているナイアガラの滝
水門の上流には取水口があり、水量の調整も行われています。ナイアガラの滝を落とすことなく、下流の貯水池へと送られるナイアガラ川の水は全体の最大75%です。
大規模な水量調整により、ナイアガラの滝は年間3センチ程度しか侵食していませんが、調整が始まる以前は年間1メートル以上侵食していました。
景観を保つためだけではなく、貯水池に送られた水は水力発電に利用されています。
水力発電所の施設を使った博物館
ナイアガラの滝周辺では、19世紀からナイアガラ川の水を利用して発電が行われていました。
カナディアンナイアガラ発電所は、20世紀初めに建てられた水力発電所の一つです。2021年にナイアガラ公園パワーステーションとして、水力発電の博物館に生まれ変わりました。
水力発電の仕組みや、交流電気を発明したニコラ・テスラなどが紹介されています。
ナイアガラの滝を眺める新名所
2022年には発電に使った水を川に戻す放水路も、トンネルとして観光用に開放されました。トンネルを抜けるとナイアガラの滝が間近に見える、ナイアガラ公園の新しい観光名所です。
世界遺産ではないナイアガラの滝の価値
ナイアガラの滝は、世界遺産という制度ができる以前から人工的に活用されていました。人の手が加わっているため世界自然遺産の対象にはなりませんが、19世紀から産業の発達にも貢献してきた価値のある観光資源です。